爪切り




「爪が長いから切る様に。」と上司に注意されたので、ナルトはその為に恋人の部屋を散らかしていた。
なかなか見つからない爪切り。引き出しを覗いていた時、その部屋の主であるサスケが風呂から上がってきた。
「何だこの有様は。俺が風呂に入る前はこんな状態じゃなかったんだが?」
「爪切り探してんの。何処にある?」
「たかが爪切りひとつでこの状態になる意味が分からんな。ちゃんと片付けたら教えてやらん事もないぜ。」
「爪切りの在りかを教えてくれたら、片付けないこともないってばよ。」
同時に下らない口争いをして結局折れたのはナルトの方だった。
毎度毎度ほんの些細な口争いをしても勝った試しが無いナルト、一度は勝ってみたいものだ。
渋々片付け終わり、サスケからやっとの思いで爪切りを受け取った。
少しばかりの達成感を味わいつつ、左手の爪を切り始めた。
部屋には爪を切るが響き渡る。
結構伸びていたんだと思い、一本ずつ清潔な爪をつくっていった。
中指が終った時に、チラリとサスケの方を向いた。
当の本人は無言で書物を読んでいた。
その目が自分ではなく小さな難しい単語の羅列に向けられていると分かると。
  少しばかりそれに嫉妬し、薬指に目を移した。
もっとかまって欲しいのに・・・
やっと左手の爪が全て綺麗に整った。後半分で綺麗になる。
そう思い右手を整え始めた。
しかし思う様に切れずに徐々に苛立ち始めた。
利き手ではない左手で作業するのはなかなか難しく、整えようと思うほど余計に切ってしまい、
結局親指を深爪してしまった。
「ヘタクソ。」
「な、うるせぇ。結構難しいんだぞ。」
ていうか何時から見ていたんだと内心思いつつ作業を続けた。
「なんで爪切る位でそんなにうまくいかねぇんだよ。」
「だって、利き手じゃないもん。」
「はぁ、これだからウスラトンカチは。」
サスケはひとつ溜息をつくと、ナルトから爪切りを横取った。
「俺がやってやる、指出せ。」
「別にいいよ、自分でするってば。」
「折角やってやるって言ってんだ、素直に甘えとけ。ほら早く。」
嫌な顔を表面で作っていても心中では嬉しさでいっぱいだった。
仕方なさそうなそぶりを見せてナルトは指を差し出した。
チョキ、チョキ。
綺麗に切ってくれるサスケ。とてもいい気持ちになってくる。
さっきまでの彼の目は文章に向けられていたのに、今は自分の指先を見つめてくれている。
そう思うだけで顔が赤くなって行くのが分かった。
少し頭を下げている格好になっているサスケ。
ナルトの目の前には洗われたばかりの艶やかな髪があった。
サスケの匂いがする、近くにいると感じる事が出来る。
多分久し振りだ。顔はもっと赤くなる。
暇になった手で無意識にサスケの髪に触れていた。とてもさらさらして気持ちがいい。
もっと触れたくて、もっと愛しくなって、頭を撫でた。
サスケは少し驚きがちに顔を上げてきた。
「なんだよ、いきなり。」
その言葉でナルトは現実に戻ってきた。
「あ、あぁー、なんか、その・・・なんでもない。」
「何でもない訳ねぇだよ、お前からなんて珍しい。今日は雪でも降るんじゃねぇか?」
「だぁーもう!何でもないの!!」
「どうだかな。ほら、終ったぞ。」
そう言って爪切りを横に置いた。
ナルトは少し名残惜しい気持ちになった。
その時、サスケはナルトの右手を自分の唇に持って行き、優しいキスをひとつ落とした。
ナルトの体は一気に上昇し、恥ずかしそうに顔を俯けた。
「なに、するんだってばよ。」
「おかえし。」
「・・・へ?」
サスケは一言だけ言うと今度は手首にひとつキスをして少しずつ腕をつたってナルトの顔に近づけた。
そしてこめかみに優しく口付けると耳元で囁いた。ナルトだけに聞こえるように、小さく、低く。
「また切ってやるよ、爪。その時は俺の所に来い。」
そう言い放つとナルトに微笑みかけ、一人部屋を出ていった。
当のナルトは少しの間恥ずかしくて石化していたがやっと思考回路が元通りになると、大声でサスケに言ってやった。
「サスケの、バッカヤロー!!」










サスケ変態目指した結果こうなりました
ボキャブラリが乏しいな私 国語は文法が嫌いだしなぁ
思ったことを文章にする事の難しさを改めて思い知らされた感じです
まぁ少しずつ慣れていくということで
最後までお付き合い頂き有り難うございました