白い雨は黒き日々の始まり

白い雨は黒き日々の始まり




 雨の中、お前を見つめる。
 当分は目が覚めないだろう、でも俺はお前が目を覚ました時にはもういない。
 俺はこれからお前を捨てて歩み続けるから。
 この世はとても、残酷だ。


 お前は俺を愛してくれた。
 俺もお前を愛した。愛しすぎた位に。
 何時も何時も似たような任務を繰り返し。
 毎度毎度お前は俺につっかかる。
 でも、それが「幸せ」という名の感情だと気付かなかった。
 でも時が過ぎて、俺も成長して、やっと分かった。
 大切なものが何処にあるのか。
 お前も同じように過ごして、やっと気付いてくれた。
 そして俺はぎこちない言葉に乗せてお前に伝えた。
 精一杯お前に分かってもらえるように、言った。

 「ナルト、好きだ。」

 「・・・え。」

 お前は戸惑ったな。それも無理はない。
 だって何の前触れもなく言ってしまったのだから。
 
 「ちょ、行き成り何言い出すんだてば!告白の練習かよ。」
 
 「練習なんかじゃねぇよ、本番だ。」
 
 「・・・お前ソレ、本気かよ。」
 
 「俺は嘘は言わない。」

 「それは・・・知ってるけど・・・。」

 「なら分かるだろこの意味。」

 平常心を保つように心に言い聞かせる。
 でも言う事を聞いてくれない心臓は、口から飛び出てしまいそうだった。
 今でもはっきりと思い出せる。生まれて初めての感覚だった。

 「分からなくも・・・ないケド・・・。」

 「じゃあ話は早いな、返事は?」
 
 「・・・行き成り言い出して、エラソーに。」
 
 「お前は俺が嫌いなのか?」

 自分で口にしたくない、「嫌い」なんて言われたくない。
 欲望はどんどん加速していく。際限なんて無い。

 「聞きたいの?」

 「当たり前だろ。」

 「・・・俺も。」
 
 「はっきり言えよ。」

 「お前は注文が多いんだよ!もう!」
 
 「それで、答えは?」

 「だぁーもう!俺も好きだって言ってんの!このちくわ耳!!」

 「・・・フン、ウスラトンカチ。」

 「な、言ってやったのに第一声がそれかよ。」
 
 でも俺の顔は嬉しさが滲み出ていて、真っ赤だったと思う。
 体中が熱くなっていった。
 そしてやっと繋がった。前より強く繋がった。
 この繋がりはきっと、断ち切れない。
 その時はそう思っていた。
 
 喧嘩して、仲直りもした。
 些細な事だったけど、お互い譲る気は無くて、怒鳴って、後悔して、自分を責めて、謝った。
 考えてる事は同じだったみたいで、謝りに行こうとした時に偶然出会った。
 会った途端同時に頭を下げて、そして「ごめん」の一言。
 俺たちきっとこのままで過ごすなんて考えたくなかったんだろうな。
 最後は笑って、そしてもっと強く繋がったきっかけになった。

 お互いの誕生日も祝ったりもした。
 「生まれてきてくれてありがとう」なんて言った事も言われた事も無かった俺たちは、
 その言葉を聞いただけで安心した。もっと側に居たくなって、互いを強く抱きしめる。
 離れて行ったりしないようになんて考えながら。

 お互いの家に泊まったりも沢山した。
 お前が危ない場面に遭遇したら、俺は迷わず助けに行った。
 俺が独りになった時、お前は黙って隣に座って手を握ってくれた。

 絶えることなく続く「幸せ」な時間。
 でもそれはもう、昔の話。

 時間が俺を変えた。
 俺は復讐者だということを思い出させた。
 この道にいる以上、俺は一生背負って行かなければならない。
 お前といると存在理由を見失ってしまう。 
 
 だから、今の自分を変える為に、断ち切った。

 切れないと思っていた繋がりを、自ら切り離した。

 そして、最愛の人に、殺しの刃を向けた。
 お前を、殺そうとした。

 でもお前は、最後まで俺を信じた。
 繋がりを守る為に、涙を流した。

 そしてお互いを想い、たった今、それは切れた。

 白い雨が俺たちに降り注ぐ。
 これで全て終った。
 また俺は独りになった。
 俺にはもう、何も無い。
 許される事はたった一つ。
 兄を殺すために力を手に入れること。
 それでも・・・

 俺はお前を愛していたかった。
 ずっとずっと側に居たかった。
 離れていかないようになんて言ったけれど。

 「離れていったのは、俺の方だったな・・・。」

 お前を殺そうと思ってしまった以上、俺にお前を愛する資格なんて無い。
 だからもう、俺のことは忘れろ。
 こんなふうに、俺を追ってきたりするんじゃねぇ。
 もしかすると、お前は懲りずに俺を追うかもしれないな。
 でもなぁ、何でだろう。
 俺はそれを待ってるのかもな。
 ずっと俺を好きでいて欲しいだろうな。
 俺は卑怯で、醜くて、最悪だ。

 この世界は最低だ。
 しかしこんな世界に生きる俺はもっと最低だ。

 そして俺は、暗くて奥がよく見えない道を歩き出す。
 その道に入れば、もう後戻りなんて出来ない気がする。
 でも俺には、後戻りする資格もない。
 これからは、憎む事しか許されない。
 漆黒の日々が続くだろう。



 終






 *後書*
 初シリアス。書いてみたかったんですこんなの。
 甘いのばっかじゃ駄目かなとか思ったので。
 サスケは最後の最後までナルト馬鹿です。
 ナルトに感謝しろよお前。
 最後までお付き合い頂きありがとうございました。