misunderstanding

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 人の噂ほど信じられない物は無いと思う。
 嘘が嘘を呼んで大嘘を作り上げる。
 でもそれから始まる本当もあるんだな。
 嘘が現実になる瞬間をオレは知ってしまった。




 何時も通り骨の無い任務をした今日、疲れた体を引きずって家路に着こうとしたオレに珍しくサクラちゃんが話しかけてきた。
 この人はオレが始めて好きになった人。でも今では好きな人である前に仲間であってほしいと強く思う。
 恋心が薄れていた。諦めたように聞こえるかもしれないけど、本当に大切な人のひとりなんだって分かったから。
 そのサクラちゃんがオレに話しかけるなんて少々珍しい。

 「ねぇナルト、ちょっと聞いてもいい?」

 「え、うん。いいけど・・・。」
 「あのさ、アンタサスケ君のことどう思ってる?」

 「サスケのこと?あいつはスカシてて無愛想で嫌なやつだってば。」

 「ふーん、そう。」

 「・・・なんか素っ気無い返事だってばサクラちゃん。」

 「別に素っ気無くなんか無いわよ、唯ちょっとね。」

 「ちょっとって何?」

 オレは質問した、何故行き成りサスケのことを聞いてきたんだ・・・。
 前々からサクラちゃんはサスケのことが好きだったのは知っていた。きっと今だって好きなんだろう。
 残念ながらオレはサスケからサクラちゃんのこと聞かれた経験はない、任務関係以外では。
 なので教えてあげられる情報ももちろん無いのだ。少しだけ申し訳ない気分になる。

 「サスケ君ってね、私によく『ナルトは?』って聞いてくるのよね。」

 「ふーん、それが?」

 「私が思うにサスケ君って、ナルトのこと気になってるんじゃないかしら。」

 「それってオレが足手纏いでってことで?」

 「違うわよ。私はサスケ君ってナルトが好きなんじゃないかって思うわけ!」

 「・・・なにを言い出すんだってばよサクラちゃん、何処をどうすればそうなるんだってばよ!」

 「だって、サスケ君女の子には全くといって良いほど興味無さ気なのよ、それにナルトのことしょっちゅう聞くんだからそう思うしかないじゃない。」

 「もしかしてサクラちゃん、サスケのこと嫌いになったの?」

 「別にそんなんじゃないわよ、サスケ君がそろそろ誰かを好きになってもらわないと私も諦められないって意味よ。」

 「え、諦めるって・・・サスケのこと嫌いになったの?!」

 「嫌いになったと言うか・・・、そうね、サスケ君に対する恋心が薄れたってところね。」

 「恋心が、薄れた・・・?」

 「それに私じゃどうも無理っぽいし、自分を愛してくれる人を好きにならないとねぇ。」

 「ふ、ふーん・・・。」

 「それにこの話、噂になってるしね。」

 「う、噂ぁ?!なんてことになってんだよそれ!!」

 「サスケ君は男色家なんじゃないかって噂になって、それが女の子たちに広まりながら噂が噂を呼んで最終的にそうなったってことよ。」

 「それって酷くない?」

 「女の子は噂が好きだからねー。」

 「好きだからねーって言葉じゃ片付かないってばよ!」

 「そうよね、流石にそれは無いか、いくらなんでも男色家ってとこで間違ってるわよね。」

 「そうだってば!きっとサスケは今女の子より強くなる事の方が優先なんだってば!」

 「あーそうか、そう考える方が妥当よね。」

 「うんうん!」

 「じゃあもうちょっと粘って見るとするか!」

 「それがいいってばよ。」

 「そうね、でもサスケ君、本当に何か有る度に『ナルトは』って聞いてくるのよ。」

 「ふーん、何でだろ?」

 「さあね、心配なんじゃない?じゃあ、また明日!」

 「う、うん、また明日。」

 そう言ってサクラちゃんは家に帰っていった。なんて迷惑な噂なんだ。でもサスケがオレの事心配するってどういうことなんだろう。
 昔は心配されても可笑しくないことばかりしていたけれど、今は昔とは違う。たまにドジを踏む程度だし。
 でもどうしてオレの名前を呼ぶのだろう。本当はその噂、合ってたりして・・・?

 「そ、そんなこと、あってたまるか!!」

 そうだ、だいたいサスケに好かれてもなんのメリットもない。しかも逆に迷惑な話だ。
 きっとサスケに恋心を抱く女の子から怒られるだけだ。
 それにあいつはオレを嫌っている。それは一緒に居るオレだからこそ分かる事。
 じゃあどうしてオレのことサクラちゃんに聞いたりするの?
 頭がサスケで支配されていく、可笑しいぞ、オレ。
 そんなことないと自分に言い聞かせる。でも悲しい事に思い当たる節が幾つか思い出す。
 オレが珍しくドジ踏んだりしたら、一番に駆けつけてくれるのがサスケだったりする。
 オレはそんなに信用無いのか・・・。
 気付いた時、体中が熱くなっていた。どうしよう、オレ。
 結局家に帰ってもその事が頭から離れてくれなくて、どうにもこうにも寝付けなかった。


 そして次の日、集合時間に少し早く向かう事にした。あまり眠れず、家に居てもどうしようもないので出てきてしまったのだ。
 少し緊張した、もしその場所にサスケしか居なかったらオレはどうしよう。何時も通りにすれば良いだけの話なのに。
 昨日の話からオレはどうも可笑しくなってる気がする。大体オレはサスケのことはチームメイトなだけだと思っていたのに。
 どうしてサスケはオレのことをサクラちゃんに聞いたりするの?
 サスケにとってはオレのことチームメイト以上な存在なの?
 オレはそれに対してどう思っているの?
 次第に歩むスピードが速くなる。そんな事絶対にない、サスケはオレの事好きなんかじゃない。
 一生懸命に否定する。そしてついに走り出してしまった。
 そんなわけ、あってたまるか!!
 走ってしまったせいで予想以上に早くついてしまった。サスケは居なかった。
 少し心が沈んだ。よかった、そう思いたかったのに、何処かで残念な気分になっている自分が居る気がした。
 居て欲しかったのだろうか、頭をめぐるのはサスケのことばかり。
 仕方なくその場所に座って他のチームメイトを待つ。
 空は青く、雲が悠々と泳いでいた。青はサスケの色。

 「だーっ!!何考えてるんだよオレ!大体サスケの青はもっと濃いってば!・・・って何言ってんだオレー!!」

 「俺がどうしたんだウスラトンカチ。」

 その時サスケが来た。心臓がひとつ大きく鼓動を鳴らした。次第にその鼓動は回数を増やす。

 「お前が俺より早いなんて、雪でも降るんじゃないか?」

 「べ、別にそこまで大げさに言わなくても・・・。」

 「それ位珍しいって意味だ。」

 ドキドキする。こんな気分になるのは久し振りだ。どいしたらいいのだろう。
 話、するべきか。

 「さ、サスケも早かったんだな。此処に来るの。」

 「集合場所に早く着くのは常識だろ。」

 「そう、だな・・・。」

 話が弾まないのは前から分かっていた、でもこんなに気まずく感じるなんて初めてで、とても戸惑う。
 サクラちゃんもコイツと話す時、戸惑ってたりしたのかな・・・。

 「お前はその分非常識だな。」

 「何を行き成り・・・。」

 「何時も遅刻しやがって、待ってる身にもなってみろよ。」

 「それはカカシ先生に言えってば、一番遅れてくるの先生だろ!」

 「それもそうだがな、お前も同類だろ。」

 「同類って、今日は違うだろ!」

 「今日は、な。何時もそうしろよ、全く。」

 「わ、分かってるよ!」

 「どうだかな、分かってるんならもう少し努力しろよ。」

 「うう、・・・。」

 「フン、ウスラトンカチ。」

 「それ言うなってば!」

 「言われたくなかったら努力しろ。」

 「言われなくても努力するよ!」

 「・・・なんで今日はむきになって言い返すんだ?」

 「な、別にムキになってなんか・・・。」

 そうだ、オレなんかサスケが言ってきたことにムキになって言い返してる。そこまで怒らなくても良いのに。
 
 「それにお前、顔赤いぜ?どうしたんだよ。」

 顔が赤い・・・。そうだ、今気付いた。オレの体は今、すごく火照ってる。テンパってて空回ってる感じがする。
 どうして?なんでオレ、ここまでムキに返すの?
 サスケのせいだから?サスケがオレに話しかけるから・・・?

 「どうしたんだよお前、キツイのか?」

 「べ、別にキツクなんかないってばよ!」

 そう言ってオレは待ち合わせの予定の橋の縁に立って元気に見せた。
 どうして心配するの?お前オカシイよ。でも、心配してくれるお前にドキドキするオレは、もっとオカシイ。

 「危ないぞ、そこ滑りやすいからな。」

 「忍なんだ、コレ位朝飯前だってばよ!」

 オレは其処で側転した、しようとした。着地しようと足を着けた時、滑ってしまった。
 そのまま下の川へ落ちようとした時、サスケが大声をあげた。

 「危ない、ナルト!」

 サスケは手を伸ばしてオレを助けようとした。オレもその手を掴もうと伸ばしたが、届かなかった。
 そしてそのまま川へ落ちた。

 バシャン

 川が浅かったので助かった。でも服は助からなかった。濡れてしまった。
 自分のやってしまった事に呆れる。何が朝飯前だ。滑ったじゃないか。注意も聞かずにするからだ。
 ああ、何やってんだ、オレ。
 その時サスケが降りてきた。そして手を差し出す。

 「ウスラトンカチ、俺の忠告を聞かないからこんな事になるんだぞ。」

 返す言葉が無い。全くその通りだ。でも、あんな大声をあげてまでオレを助けようとしたのは何故?
 何時もオレの事馬鹿にするくせに、どうして心配するの?
 このままずっと自分だけ考えてるのは嫌だ。そんなのオレらしくない。

 「どうしてサスケはオレの事サクラちゃんに聞くの?」

 「は?」

 「どうしてさっきも大声あげてオレの名前呼んだの?」

 「・・・行き成り何言って・・・。」

 「オレの事毎回馬鹿にするくせに、どうしてオレを心配してるような事すんの?」

 「・・・。」

 「なぁどうして?オレの事好きじゃないんなら、心配なんてしなくてもいいじゃんか。」

 「・・・いいから早く立てよ。」

 「オレの事嫌いなら、嫌いらしくしろよ!」

 「・・・。」

 「このままだとお前、噂がどんどん広まって女の子から変な目で見られる様になるんだぞ。」

 「・・・どういう意味だ?」

 「お前がオレの事好きだって噂が広まってんだよ!そんな目に遭いたくないならオレの事心配すんなよ!」

 「・・・はぁ、全く。女って生きモンは。」

 「なぁ嫌だろ?お前だって普通の恋愛したいだろ?」

 「・・・恋愛はな。」

 「なら早く誤解解けよ、オレに優しくすんなよ・・・!」

 「・・・はぁ、何処からそうなったんだ。」

 サスケはそう言うとオレの手を強引に掴んで立ち上がらせた。
 そしてまじまじとオレの目を見つめてきた。

 「そう考えるのが、一番自然かもな。」

 「・・・そう考えるって、何が?」

 「俺がお前のこと好きだってことがだ。」

 一瞬頭が真っ白になる。サスケがオレのこと、好き?
 サスケは話を進めた。

 「サクラにお前のこと聞くのも、お前のこと心配するのも全部、お前のこと好きになったからじゃないのか?」

 「・・・え?」

 「そうすると、辻褄が合うしな。もうこれは認めるしかねぇだろ。」

 「認めるって・・・噂を?」

 「それ以外に何がある。」

 「・・・嘘、だ。」

 「嘘なんかじゃねぇよ。」

 「・・・そんなのオレ、信じない。」

 「お前は信じなくても俺はそうなんだ。」

 「だってそうしたら、お前本当に男色家になっちまうじゃんか!」

 「・・・そんなのまで広まってんのかよ。」

 「そんなの嫌だろ普通!」

 「普通はな、でも仕方ないだろ。お前が好きなのは事実なんだぜ?」

 「でも・・・。」

 「・・・お前がどうであれ、俺はお前が好きなんだ。別に否定する理由は無い。」

 「・・・。」

 「まぁいつかお前をその気にさせてやるよ。」

 「・・・!!その気って!」

 「ほら、何時まで此処にいるつもりだよ。さっさと上がるぞ。」

 「・・・あ、うん。」

 「それとも、俺がおぶって家まで送ろうか?」

 「な、そんなことしなくても自分でするってば!」


 嘘が現実になった時、それは思いもよらなかった初めての経験。
 これからオレは、この気持ちにどう答を出すんだろう。
 少しだけ、予想はついているが。
 なんとなくだけど、その予想は当たる気がする。
 答が出るのにそう時間はかからないと思う。






 終






 *後書*
 タイトルとあってない気がしますとっても。
 タイトルの意味は『誤解、不和』、不和ってなんだろ。(知っとけよ)
 噂って怖いですよね。可愛そうな誤解もよくあったりしませんか?
 女の子って噂好きが多いです。私もそうです。酷いですねあっはっは。
 最後までお付き合い頂きありがとうございました。