守りたいもの

守りたいもの




 俺の名は「うちはサスケ」、秘密諜報組織『KSF』の一員だ。
 今回俺に任せられた任務は謎の暗号名『ラビットフット』を敵から奪う事。
 危険の呼び起こす物として今密輸者からの注目を浴びているらしい。
 どんな物なのかまでは掴めていないが危険な事には変わりは無い。
 何時も通りに任務に向かうが、そこまでの過程が俺には苦痛なのだ。
 俺の恋人、「うずまきナルト」に嘘をついてこなければいけない。
 最愛の人に嘘をつくなんて最低な行為だが、言ってしまい事件に巻き込む訳には絶対にいかない。
 でも何時も思うのはお前の笑顔ばかりだ。

 「ナルト、すまない。今度の約束果せそうに無い。」

 「え・・・、そうか。また仕事?」

 「ああ、今度は海外出張になるんだ。」

 「そっか、まぁ仕方ないってばよ、また次な!」

 仕方ないなんて言うわりには、とても辛そうな笑顔だった。
 何時も何時もこんな嘘をついて、任務をこなして行く俺に、お前は何も不信感を抱かないのだろうか。
 もしかするも既に俺がこんな仕事をしているなんて気付いているのだろうか。
 でもこんな仕事をしている以上、たとえ恋人だとしても絶対に口にしてはいけない。
 何時も何時も心の中で謝る。ごめんな、ナルト・・・。

 「じゃあさ、サスケの都合が会い次第に食事しに行こうってば。」

 「ああ、そうだな。」

 「うん、じゃあな。仕事頑張って来いよ!」

 そう言ってナルトは家に帰っていった。
 ナルトの気配が薄れると直ぐに自分の部屋に戻り、任務の詳しい内容を聞く。

 『今回うちはサスケに命ぜられた任務は、「ラビットフット」という謎の暗号名の物を敵から奪い、本部まで持ち帰る事だ。
  待ち合わせ場所は○○空港の自家用ジェット倉庫だ。君以外に優秀な者をこちらで選んでおいた。
  必要な物を持って二十四時間後に集合だ。健闘を祈る。尚このメッセージは五秒後に自動消滅する。』

 五秒経ちボンと小さな音を立てて消滅していったインスタントカメラを俺はじっと見つめた。
 今回も厄介な事になりそうだ。

 言われた通りに行くと其処には既に二名居た。サクラもカカシも何度も同じ任務をこなして来た顔だった。
 
 「よー久し振りな感じだなぁ、お前最近単独任務多かったろ?」

 「そうだな。チームを組むなんて久し振りだ。」

 「そうね、早速だけど現地に向かうわよ。」

 「ああ、分かった。」

 ジェット機に乗り込み現地に向かう。ここまで来るともう後戻りなんて出来ない。
 こんな仕事、もう止めてしまおうか。最近はそんな事を考え始めた。

 そして十数時間が経ち、只今俺は拳銃を持ち敵と激戦中だ。
 古びた工場であちらこちらから銃声が鳴り響く、二人とも上手く進んでいるようだ。
 それはさて置き今は俺の近くにいる敵を排除して行かなければ前には進めない。
 周りには十数人の敵が居る。弾はストックも合わせるとギリギリだ。外す訳にはいかない。
 目的の物が有る部屋まではあと一息だが、なかなか敵が手薄にならない。
 肉弾戦も考えておく必要がある、此処で一気に消していかなければ。
 こんな時に限ってナルトの顔を思い出す、早く会いたい。
 そして小さく決意し一気に攻めていく、走りながら敵の急所を確実に狙い打つ。
 右に一発左に二発、そして進行走行に三発と次々に銃の引き金を引く。
 その時通信が来た。

 『サスケくん、こちらサクラ。このフロアにはもう敵は居ないみたい。後はラビットフットを探すだけよ。』

 「こっちはまだまだだ、応援に来てくれ。後少しでターゲットが手に入るがなかなか手薄にならない。」

 『サスケ、こちらカカシ。そこの角を右に曲がれ、後敵は三人居るがマシンガンを所持している。気をつけろよ。』

 「っち、弾が僅かしか残ってねえってのに。」

 『サクラを敵の後方に回るように指示するから手前で待機してろ。準備が整い次第合図する。』

 「了解。」

 今回の敵はなかなかのヤツだ、此処まで拳銃を密輸していたなんて想像以上だ。
 だが使う相手が素人同然では宝の持ち腐れになる。所詮は大した事の無いチンピラか。
 雇い主は人材を選んではいない様だ、数では弱点を完全に穴埋めし切れない。相当の財を持っているのだろう。
 合図を待つ間ナルトのことを考える、昨日会ったのが最後だ。
 でも顔は笑っているとは程遠かった。もっと側に居てやるべきなんだろうが、
 こんな仕事をしている以上暇な時間なんて殆ど出来ない。約束など交わしても、守れないのが現状だ。
 お前は守ろうとして必死なんだろうが、俺がそれを悉く破っていく。
 ここ最近は一つでも守った記憶が無い。これでは恋人失格だ。
 悲しませたくないが、上が許してくれない。会いたいのに、会えない。
 その時カカシから合図が来た。

 『大変だ、相手は人質持ちだぞ!』

 「なんだと?!」

 『此処からでは分からない、妨害電波を発しているから見えづらいんだ。』

 『相当な数の武器を持っていたのよ、もしかすると人工衛星まで所持している可能性もあるわね。』

 「俺たちが来る事は最初から分かっていたってのか、クソッ。」

 『あまり考えたくないがそれが妥当だろう。』

 『もしかすると、組織の存在を知っていたと考えると、私たちにとって身近な存在の人が拉致されたんじゃ・・・。』

 「そして俺たちがこんな仕事をしているなんて知らない人か。」
 
 『全く、毎度のように敵さんは最低極まりないな。』

 「此処でチンタラ考えていたら人質の命が危ないぞ。」

 『ああ、準備は良いか?五秒後に攻撃を仕掛けろ。』

 「五、四、三、二、一。」

 そして最後の一つであった手榴弾を投げた。
 敵三人は倒れており、サクラと合流して最後の扉の両際で銃を構える。
 サクラが扉を開ける。そして一言。

 「手を挙げなさい。」

 その時 バン と大きな銃声が響いた。直ぐに俺も部屋に入る。
 このにはサクラが倒れていた。

 「サクラ!」

 そして暗闇からすっと顔を覗かせる男が一人残っていた。
 銃を片手に持っている。敵は大柄で整った服装だった。
 俺は銃口をその男に向けた。

 「手を挙げろ。」

 しかし敵は手を挙げようとはしなかった。
 俺は繰り返す。

 「手を挙げろ。」

 そいつは口を開いた。

 「やぁこんにちは、KSFのうちはサスケ君。」

 「手を挙げろと言っている。」

 「君に会えて嬉しいよ、でも君はあまり穏やかじゃないらしいね。」

 「・・・何故俺たちが此処へ来ることが分かった。」

 「そんなの簡単な事さ、人工衛星さえあれば君が何処へ居ても分かる。」

 「ラビットフットをこっちに渡し人質を速やかに放せ。」

 「人質?ああ、コレの事か。」

 そう言って男は暗闇からもう一人の引っ張ってきた。
 手足は車椅子に縛られており、顔には紙袋が被せられて見えなかった。

 「早く銃を捨ててくれないかな、きっと君はコレを見たら冷静じゃ居られなくなるよ。」

 「何が言いたい。」

 「私には君の要望には答えられないってことさ。どちらか選んでもらおうか。」

 「なんだと?」

 「この人質とラビットフット、どっちが欲しい?」

 「どっちもだ。」

 「我侭なのは嫌いなんだよ私、君にとってラビットフットはどのような存在なんだ?」

 「お前みたいな極悪人が持っていてはいけない危険なものだ。」

 「そうじゃないよ、君にとってどれだけ大切な代物かと聞いているんだ。」

 「それは・・・。」

 「本当は君にとってラビットフットなんてどうでもいいんじゃないのかな。」

 「どういう意味だ。」

 「君にとってはこんなものよりこの人質の方が大切だと言う事だよ、サスケ君。」

 そう言って男は人質に被せていた紙袋をゆっくりと取った。
 俺は目を疑った。その人質は俺の恋人、ナルトだった。

 「・・・ナル、ト・・・!!」

 「サスケェ、どういうことだよコレ。」

 「どうしてお前が・・・。」

 男が話し始めた。
 
 「さあ選ぶんだサスケくん、此処には君と私とこの人質の三人しか居ない。生憎だが此処からではもう一人の仲間と通信
  することは出来ないよ、この部屋は妨害電波で囲まれていて一歩でも踏み入れば通信不可能なんだ、君に全てはかかって
  いる。さあどれが欲しい?」

 「俺は・・・。」

 俺は最低だ。最愛の人を巻き込んでしまった。最悪の事態を招いてしまった。
 それに俺にはもう後は無い。コイツが俺の全てを手に握っている。
 先手を打たれてしまっては、スパイとして失格な事だ。
 この「ラビットフット」が何処まで危険なのかはわからない。放っておくのは世界の破滅に繋がる可能性だってある。
 だが俺にとってナルトを取られる事は世界が破滅するよりも大変なことだ。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 俺がこんな仕事をしてしまったからこんなことになるんだ。
 自業自得だ。そして俺は答を出した、もうどうなろうが構わない。

 「俺は・・・、ナルトを選ぶ。」

 そう言って俺は持っていた銃を投げた。途端に男の顔がにやけた。もう言ってしまったのだから後戻し様がない。

 「いい答だサスケ君、所詮は心を持った人間か、KSFなんて唯の肩書きにしかすぎん。」

 「お前も人間なら俺の苦悩も少しは分かると思うがな。」

 「私は人間でも人情なんてとっくの昔に捨てたのさ、だからこのラビットフットを使って好きなように世界を動かす。」

 そして男はアタッシュケースを持ち後ろの窓へと近づきながらリモコンを押した。
 するとナルトの首に付けてあった何かが点滅し始めた。嫌な予感がした。
 すぐさまナルトに近づき首輪を見た。汗が首筋に伝った。

 「おい待て!ナルトに何をした?!」

 「言っただろさっき、『人情なんてとっくの昔に捨てた』って。」

 「!、ふざけるんじゃねぇ!!俺は選んだだろう!自爆装置を止めろ!!」

 「もう君の要望には答えたくないんでね、では失礼するよ。」

 男はそう言い放つと窓を開けた。そして待機させたヘリに乗ろうとした瞬間、ズカンと音を立てた。
 男は血を流してそのまま三階から外へと落ちていった。
 窓の向こうにはカカシが銃を持って居た。

 「妨害電波で部屋を囲んだのが仇になったな、この男からも俺が来るなんて予測できなかったのが欠点になったか。」

 「カカシ、助けてくれ。ナルトが、ナルトが・・・!!」

 「落ち着けサスケ、直ぐに解除するよ。少し待っとけよナルト。」

 カカシは冷静に解除していった。そしてやっと首輪が取れた。

 「ナルト・・・!ごめんな、こんなことに巻き込むなんて。」

 「バカサスケ!!オレってばスッゲェ怖かったんだぞ!!」

 「ああ、そうだな、守ってやれなくて本当にすまない。」

 「う、うえぇん・・・バカサスケのバカ・・・。」

 「本当にごめんな・・・。」

 そう言って強く抱きしめ合った。そして優しいキスを一つ落とす。
 そしてナルトに誓った。

 「絶対にこんな目に遭わせたりしないからな。」

 「当たり前だってばよ。」

 側で見ていたカカシは倒れているサクラを抱え込みサスケに指示した。

 「何時までも此処にはいられない、追っ手が来る可能性があるからな、早く車に乗り込むんだ。」

 「ああ、分かった。ナルト行こう。」

 「うん!」

 そして車の中でサスケはこれまで自分が嘘をついてきたことを全て話した。
 ナルトに許してもらえるように、ずっとずっと謝った。

 「ごめんな、ナルト。俺がもっとしっかりお前に付いといてやればよかったな。」

 「全くだってばよ、それに恋人に嘘つくなんてサイテーだ!」

 「そうだな、最低だ。返す言葉が無い。」

 「でも、オレの為に嘘ついてたんだから許してやるってばよ。」

 「ナルト・・・、ありがとな。」

 「おうよ!それでさ、オレも決めたんだ。」

 「何がだ?」

 「オレもサスケと同じ仕事する!」

 「な、お前には危険だ!絶対駄目だ。」

 「じゃあオレサスケのこと許さない。」

 「そ、それは・・・。」

 「嫌なら認めろってばよ。」

 「・・・じゃあ、必ず俺と一緒の任務に就けよ。」

 「うん!任せとかよ、オレってば絶対スッゲェ強いスパイになってみせっからさ!」

 そして無事に本部にラビットフットを届けて任務完了した。
 これからはずっと側に居てナルトを守ってやると誓った。
 でも、もしかすると、
 俺が守られる羽目になるかもな。
 まあ、まだまだ先の話だがな。







 終






 *後書*
 以上に長ったらしくなりましたすみませんMO子さん。
 映画パラレルという事で「MIV」を題材にしてみました。
 トムがカッコよかったのが印象的な映画でした。コレでトムが好きになりました。
 こんな駄文極まりないものでよろしかったら持って帰ってください。
 最後までお付き合い頂きありがとうございました。
 この作品はMO子様のみお持ち帰り可能です