はじめて君としゃべった

はじめて君としゃべった




 「お、オイ!」
 恐る恐る君に声をかけた。胸は不安でいっぱいだった。
 「・・・なんだよ。」
 オレはクナイを見せて出した。これは君がさっき的から外してしまったもの。
 偶々近くに居たオレに危うく当たってしまう所だった。
 「コレ、お前のだろ。返すってばよ。」
 「なんでお前が持ってんだ。」
 言葉には少々棘があるように聞こえた。こいつもオレが嫌いなのか・・・。
 「オレんとこに飛んできたの!だから返しに来た。」
 「そうか。」
 此処で話が止まった。
 君ともっと話してみたい。もっと君の事知ってみたい。
 前から思っていた。君はオレと同じ、『独りぼっち』だから。
 君を仲間と思いたい。君と友達になりたい。
 でもオレは不器用だから、何を言っていいのか分からない。
 そうしたら君から話しかけてきた。
 「・・・何時までこんな所に居るんだ。さっさっと帰れ。」
 やっぱり君はオレの事なんてどうだっていいんだね。
 所詮はそんな所だと思っていたけど、改めて言われると余計に空しくなる。
 迷惑そうな目でこっちを見る、その目がとても鋭くて、オレは目をそらした。
 「・・・何か言いたい事でもあるのか?」
 「・・・別、に・・・。」
 「ならどうして其処で突っ立ってんだよお前。」
 これから言おうとしてる事に君はどんな反応するだろう。
 「帰ってもひとりぼっちだから・・・。」
 君は目を少しだけ見開くと、直ぐにまた無愛想顔になった。
 「・・・だから何だよ。」
 少しだけでいいから此処に居させてください。そう言いたかった。でも言葉に出せない。
 オレが黙っていると君はこっちへ近づいてさっき渡したクナイを差し出した。
 「お前もしたいのか?」
 その言葉にオレは驚いた。君が修行に誘ってくれたんだ。オレの顔は一気に笑顔になった。
 「うん!」
 心の中で大きく喜んだ。
 オレは頷いて君が差し出したクナイを手に取った。
 君が側に居てくれるんだ。少し緊張した。
 右手にしっかりクナイを持って思いっきり投げた。
 でも投げたクナイは的には当たってくれなかった。
 これでは自分がヘタクソだという事を唯言っているようなものだ。
 なにやってんだろ。
 俯きがちに降り向いて君の反応を待った。
 「ヘタクソだな、お前。」
 「な!これはちょっと手元狂っただけだってばよ!」
 「フン、じゃあもう一回やってみろよ。」
 よーし、燃えて来た! 君の前だから余計に緊張するけれど、
 今度は見返してやる!
 「おりゃ!」
 力みすぎたのか、声まで出てしまった。
 だがそれも見事にはずれ。
 「やっぱヘタクソじゃねぇか。」
 「う、うるせぇ!次こそはちゃんと・・・。」
 「お前、握り方が間違ってる。」
 「へ?」
 行き成り自分の間違いを指摘して来た。
 アドバイスのつもりなのだろうか。
 「アカデミーで習わなかったのか?」
 「う・・・サボってばっかだったから・・・。」
 「はぁ、お前、ウスラトンカチだな。」
 「う、うすら・・・?」
 「馬鹿だってことだよ。」
 「なんだと!コノヤロー今に見てろ!絶対出来るんだかんな!」
 軽い挑発に乗ってしまい、日が暮れるまで的に当てる事に没頭していた。
 君はそんなオレをずっと見ていてくれた。それだけで嬉しかった。
 今までそんなふうに見られた事無かったから。
 周りの大人はオレを避ける。偶にだけどそんな親の子からも冷たい目で見られる。
 オレは独りだった。
 だけど今は君が居てくれるから、
 そんな事どうだって良いんだ。
 なんてったって今は、

 独りじゃない。

 クタクタになったので君が腰掛けていた所の隣に座った。
 体が重くなっていた。
 「はー腹減ったってば。」
 「俺もそろそろ減った来たな。」
 「今日はなに食べようかな?」
 「そうだな・・・。」
 「んー昨日は味噌ラーメンだったから今日はとんこうにしよ。」
 「お前・・・、昨日もラーメンだったのに今日も食う気か?」
 「うん、そうだけど。」
 「・・・信じらんねー。」
 「なんだよソレ!うまいじゃんラーメン。」
 「まあそうかも知れねぇけど、二日連続は無いな。」
 「二日連続じゃないってば、ほぼ毎日だってばよ。」
 「・・・本当かよそれ。」
 「うん!」
 君はそれを聞くと少しだけ笑った。
 「フン、ヘンなヤツ。」
 「何がだよ。」
 「ラーメンばっか食ってるヤツなんて聞いたことない。」
 「なんだよそれ・・・。うまいからいいじゃん。」
 そう言うとオレは少し頬を膨らましてみせた。
 「ラーメンか・・・偶には良いかもな。」
 「いや、毎日良いってば。」
 話ができた。ちゃんと返事を返してくれた。少しだけ、笑ってくれた。
 今まで生きてきて一番嬉しい気持ちになれた気がする。
 このまま時間が止まってくれればいいのに。
 もっといろんなこと喋って、もっと一緒に修行して、もっと笑って欲しい。
 こんなふうにオレの隣に居て欲しい。
 でも、そんな事叶っちゃいけない気がした。
 きっと叶ったら、抜け出せなくなるんじゃないか・・・。
 「そろそろ帰るか。」
 「え、もう?」
 「もうって、こんなに暗いのにまだする気か?」
 「あ、そっか・・・。」
 「・・・。」
 「・・・。」
 話か途切れた。また初めに戻ってきた感じになった。
 「・・・また・・・。」
 「・・・?」
 「・・・またな。」
 そう言って君は立ち上がってオレを見ずに行ってしまった。
 『・・・またな。』
 この言葉がずっと頭から離れなかった。
 また次に会おうと、そういう意味として受け取っていいのだろうか。
 できる事なら、そう思いたい。
 また会おう。
 「・・・オレも!」
 一時して言った言葉に返事は無かった。
 今日は良い日だった。
 また、こんな日が来ればいいのに。
 いつも来てくれとは言わないから。
 せめて、もう一度だけ・・・。










*後書*
なんかサスナルじゃ、ないんじゃない?
友情っぽくなっちまったな。
これは「ナルトベストヒットコレクション2」を買った記念に書きました。
「はじめて君としゃべった」はサスナルのための歌だと思います。
他の曲もスゲェ好き。アニナルソング万歳☆
最後までお付き合いいただきありがとうございました。