フェア




次の日の任務は果物を狩る仕事だ。
昨日同様カカシとサクラ、ナルトと俺で仕事をすることになったが、昨日以上に任務に身が入らない。
昨日の風呂場での出来事を未だに引きずってしまい、ろくに眠れずにいたのだから。
カカシからも「昨日の二の舞にはなるな」と注意されたがやはり駄目だった。
脚立に乗り、林檎を狩るだけの事なのに、さっきから全く進んでいない。
昨日の疲労と睡魔、それにナルトのことで頭が一杯になり、もう何も出来ずにただ頭を抱えていることしか出来なかった。
その時、背後から硬いものが頭に当たりそのまま俺は脚立から落ちてしまった。

あいつに笑ってほしい

俺の前でもちゃんと笑顔でいてほしい

じゃあ俺は何をすれば良い?

何をすればあいつは俺に笑いかけてくれる?

どうすればいい どうすればあいつは・・・

目が覚めた時、俺は布団の上に横たわっていた。
そうだ、俺は気絶したんだ。なにやってんだよ、俺。そう思い何気なく横を向いた。
そこにはあいつが、ナルトが座って俺を見ていた。
「気がついたか、良かったってば。まだ頭痛む?」
「なんでお前が居るんだよ。」
そう聞くと少し俯きがちに口を開いた。
「オレのせい、だから・・・」
「・・・は?」
「オレが悪いんだってばよ。サスケがてっきりサボってると思って、だからふざけて林檎投げたら、
サスケの頭に当たって、そんでサスケが脚立から落っこちてさ。だからさ。ココまで負ぶって来たんだってばよ。」
「そう、だったのか。」
「ゴメンってば、サスケはまだココで休んどけよ。まだ仕事残ってるし。」
「まだ終ってないのか?」
「その・・・ サスケが心配でさ。」
俺はその言葉に激しく衝撃を受けた。 ナルトが俺を心配? ナルトはまた話を続けた。
「その、それに最近なんかヘンなんだってばよオレ。
なんかサスケの事になるとさ。ヘンに頭が一杯になって、それでなんかもうどうしたらいいのか分かんなくなっちゃうし、
オレこんな気持ちになったの、なんだろ、初めてかも。」
おい、それってまさか、ナルトが俺を?
「なんだよそれ、まさかお前、俺に気があるってことじゃないのか?」
そう言うとナルトは少しずつ顔が赤くなってきた。やべぇ、ストレートに聞きすぎだ俺。
でももしそれが・・・
「な、なんだよそれ。まるでオレがサスケの事・・・あーもう!そんなことあるもんか!!」
俺もどんどん体内から熱の波が押し寄せてくるのが分かる。
少し、いやかなり嬉しい。少しでも俺のことを考えてくれたことに頭が一杯になっていく。
もう自分の予測なんてどうでもよくなる。
少しでもいいから俺の気持ちを分かってほしい。
そんなことが頭を過ぎった。
そして気づけば俺はナルトを抱きしめていた。
「サ、サスケ?!何やってんだってばよ!こんな格好他の人に見られたら・・・///」
「ひとつ、聞いてもいいか?ナルト」
「・・・なんだよ///」
「お前は俺をどう思ってる?正直に答えてくれ。頼む。」
「なっ?!いきなり何て事聞くんだよ!お前まさか、オレが投げた林檎のせいで頭おかしくなったんじゃ・・・」
「俺はお前が好きだ。」
「・・・え?」
「前からナルトの事で頭が一杯だった。本当はただ、お前に笑って欲しかっただけなんだよ。」
「サ、サスケ・・・」
「今だって、これからだって、この気持ちは変わらないから。」
「・・・」
「好きだナルト。もう俺にはお前しか見えない。」
「・・・サスケ。」
ナルトが俺の名前を呼んだ時、やっと自分のやってしまった事の重大さが分かった。
何やってんだよ、俺!
「わ、悪ぃ、いきなりこんなこと言って、気持ち悪いよな。ごめん・・・」
ナルトを抱きしめていた腕を素早く離すとナルトに今の自分の顔を見られたくなくバッと立ち上がり、
窓に近づいて誤魔化した。
「悪かったな。もう行っていいぞ、カカシには何も言わなくていいから。」
そうナルトに言うとあいつは俺に話しかけてきた。
「オレはさ、なんでもこなして、いつも直ぐにやってのけるサスケがムカツクやつだし同じ位憧れだった。
だからお前に酷いこととか言って同じ所に立ちたかっただけ、そう思ってた。
でも本当は違ったんだってば。本当はオレがサスケの事が好きだってことを誤魔化す為に言ってたんだ。
認めたくなくて、ただそんな事ばっか口にしてた。でも気づいたってばよ。
オレもサスケが好きってこと、今なら認められるから。」
話を聞いてて俺は、その言葉を信じたくて直ぐに振り向いた。
俺の目に入ってきたあいつの顔は、今まで一度も見た事が無い位優しくて、とても大きな笑顔だった。
俺はナルトを抱きしめた。もう二度と離さない位に。
そして俺もナルトに微笑みかけた。初めてこんなに優しい気持ちになれた気がした。
この気持ちが永遠に続けばいいと、そう願って。

俺はただお前に笑って欲しいだけだった。

他も誰にも見せた事の無い、とても優しく、とても大きな笑顔が見たかった。

でも今、その願いが叶った時、気づけば俺も笑っていた。

そうだ、俺が笑えばお前も笑ってくれるんだと、そう感じた。

欲張りだがどうか願いが叶うなら、

その綺麗なお前の笑顔を他のヤツなんかに見せたりしないで。

この世には何一つ公平な事なんて無いんだから。










恥ずかしいの一言です
でもこれで終わりです いやー無事終了できてよかったよかった
最後までお付き合い頂き有り難うございました
感想など伝言へ一言していただければ嬉しい限りです