雨待ち

雨待ち




 任務が終った時、頃合を見計らったかのようにポツリ、ポツリと雨粒が降ってきた。
 今朝の天気予報では晴れるが夕立が来るかもしれないので傘を持ち歩くといいなど
いい加減な情報が見事的中。
 残念ながら持ち合わせておらず、急いで帰る理由も無いので近くで雨宿りをする事にした。
 何時もならこんな事があったとしたら急いで帰るのだが、
 今日は何となくそんな気分になれなかった。
 心の何処かで寄り道がしたい気持ちがあったのかもしれない。
 小走りで雨宿りに適した場所を探す。
 周りの者はみんな焦って家路について行った。
 傘を持つ者に「いっしょに入れてくれ」など頼んだり、
 降り注ぐ雨を腕で凌いだり。しかし後者の方はあまり役には立っていないと思うが。
 そんな事を考えていた時、丁度良い場所が目に入ってきた。
 今はもう使われていないのだろう、近くに人の気配がしない。
 井戸に雨が入り込まないようにする為と思われる屋根があった。
 井戸には蓋がしてあり、広さもなかなかある。
 迷わずそこに入った。
 簡単に濡れた部分を拭く。雨は増す増す勢いが上がってきた。
 雨宿りをした以上、少しでもこの場所に居ないと意味が無いだろう。
 止む気配が見られない雲をただ見ていた。
 最近の自分はどうも変な気がする。何かを期待するかのように今までやった事の無い行動を
度々とるようになった。
 でもその何かが分からない。しかも何故か浮かぶのはあの金髪頭のウスラトンカチだけ。
 気のせいだろうと思うが、どうも頭から離れてくれない。
 忍のくせに目立つ格好だから?だとしたらサクラの方もなかなか目立つと思うのだが。
 毎度毎度見事なまでにドジを踏んでいるから?それなら口で言えば済む話だ。
 でもあいつに言ったところで治る根拠は何処にも無い。逆上されるのがオチだろう。
 では何故頭から離れないのだろう。考えれば考える程答は見つからない。
 埒が明かないので考えている事を一時的でいいから止めた。
 この答に辿り着けば、それから逃れられないような気がした。
 そう思った時、その金髪頭の目立つ格好をした少年がこっちに向かって走ってきた。
 目を見開いた。心を読まれていたのではないかと一瞬思った。
 凝視してしまった。そして、目が合った。合ってしまった。
 その少年ナルトも驚いたような目をして俺を見ていた。
 「あ、サスケじゃん。どうしてこんなとこに居るんだってばよ?」
 「・・・別に理由は無い。」
 「ふーん。あ!お前良いところに居るな、オレも雨宿りしよ。」
 心臓が一瞬だけ高鳴った気がした。きっと気のせいだろう、そう思いたかった。
 ナルトはそう言い、俺に近寄ってきた。
 「はー、行き成り降って来たからかなり焦ったってばよ。」
 「そう、か。」
 どうすれば良いのだろう。なんてあまり考えた事の無い事を考えてしまった。
 するとナルトの方から話しかけてきた。
 「早く止むといいな、雨。」
 「夕立だから直ぐに止むだろ。」
 「そっか、よかった。」
 話が途切れた。少しこの状況に戸惑う。何か話すべきなのか。
 「・・・お前はどうしてこんな雨の中に居たんだ?」
 「演習場に忘れ物したんだってばよ。それで探してたら突然雨が降ってきてこうなったってわけ。」
 「お前らしいな、忘れ物するところが特に。」
 「お前、馬鹿にしてるだろっ!」
 「馬鹿なんだから仕方ないだろうが、されたくなかったら改善しろ。」
 「ふん!サスケだってどうして此処に居るんだよ。」
 「言っただろ、理由なんてねぇよ。」
 「嘘だね。だって何時ものサスケならこんな状況になったら直ぐに家に帰るってばよ。」
 何時もの、俺。か・・・
 「そんで家に帰って苛々しながら風呂に入る!あ、これはオレの予想だけど。」
 「・・・何時もの俺なら、そうかもな。」
 「え、マジで苛々しながら風呂入るの?」
 「そっちじゃない。」
 「?」
 何時もの俺ならこんな古びた所なんかで雨宿りなんてしない。
 でも今日は違う。
 どうして・・・?
 もしかして、
 「待ってた・・・?」
 「・・・は?」
 「いや、なんか、サスケらしくなかったから。もしや、オレの事待ってたり!?」
 「馬鹿は休み休みに言えウスラトンカチ!」
 「な、冗談に決まってんだろ!そんなムキにならなくてもいいってば。」
 「下らねぇ事言うからだろ!なんでお前なんか待たなきゃいけないんだよ。」
 ではどうして雨宿りなんかした?
 何時も通りに真っ直ぐ寄り道せずに帰ればいいだろ。
 でも何故そうしなかった?
 もしかして、

 心の底ではナルトの言う事が合ってると思うから・・・?

 その時、体温が徐々に上がってくるのが分かった。
 「んな訳、あって堪るかよ・・・」
 「んーサスケなんか言ったかってば?」
 「別に。」
 「・・・お前、態度悪い!」
 「いきなりなんだよ。」
 「人が聞いてんだから真面目に答えろ!」
 「お前に答える義務なんてない。」
 「ある!あるってばよ!」
 「そんなに聞きたいのか?」
 「だーかーらー、その為に聞いてんだろーが!」
 「お前には、言わねー。」
 「なんだってばよそれ、もうなんかこの状況嫌だオレ。帰る!」
 「おいまだ降ってるだろ、何の為に此処に居るんだよ。」
 「お前と居んのが嫌なの!バカサスケ。じゃあな!」
 ナルトはそう言うとまだ雨が降っている中を走って行ってしまった。
 俺はそれを見ていた。姿が消えるまで。

 今まで気付かなかったこの気持ち。
 今になって少し分かった気がする。
 でも、もう少しの間、
 気付かないフリをしとこう。
 出来るならこの感情も、
 もっと大きくなる前に、
 この雨と一緒に流れて消えてくれないだろうか。
 今ならまだ遅くないはずだ。
 でも、もしかすると、
 もう手遅れなのかもしれないが。










甘い・・・のか、否か。
塾に居るとこんな事ばかり考えてます。
次何書こうかとかね。
最終的に何が言いたかったのだろう。
てかもうどうにでもなれ。(開き直り)
最後までお付き合いいただきありがとうございました。